現代の都市や地域の発展において、産官学民が協力し合う「まちづくり」事業は不可欠です。
しかし、この協働による実践活動を長期にわたり維持することは、多くの場合、困難を伴います。
そこで注目すべきは、持続可能な社会を築くためにどのようなリーダーシップとコーディネート力が必要かという点です。
今回は、樋口邦史氏の著書「まち・ひと・しごと創り」に基づいて、その方法について深掘りしてみましょう。
持続可能なまちづくりに必要なリーダーシップとコーディネート力
持続的なまちづくりには、活動を主導するリーダーの役割が非常に重要です。
しかしこのリーダーシップは一人の力ではなく、多様な立場の関係者が協力し合う協調的な力によって成り立ちます。
具体的には、以下のようなポイントが重要と考えられます。
まず、自治体や大学、企業、住民団体のそれぞれがどのようなニーズや目標を持っているのかを正確に把握し、その上でコーディネートする能力が必要です。
この共通認識を持つことで、より実効性のあるプロジェクトを組むことが可能となります。
また、地域に根ざしたビジョンを描くことで、プロジェクトは目的を持ち、発展していくことができます。
このビジョンには地域の特性や課題を反映したものであることが重要で、これが他地域における活動展開の際の参考となります。
私たち個々人は、集団の一員として活動に貢献していく中で、そのプロジェクトをより広く認知させたり、参加者を増やしたりするための働きかけを行い続ける必要があります。
これにより、プロジェクトは長期的に持続可能となり、さらに地域の人材育成にも寄与するのです。
まち創りにおける「ひと」の重要性
「まち」を作る上で不可欠なのは、そこに関わる「ひと」の存在です。
この「ひと」はプロジェクトの担い手、また地域を支える大切な人材です。
「ひと」を創り出すためにはまず、地域の人々が持つ能力や経験、希望を引き出し、それを発揮できる場や機会を提供することが求められます。
樋口氏が述べるように、持続可能なまちづくりには、地域の若者や将来のリーダー的存在をどう育てていくかという視点が重要です。
彼らに地域の課題や可能性を体感させ、具体的な解決策を提示し、その実現を自身で導いていける環境を整える必要があります。
また、地域中に「ひと」が持つ想いを共有し、それを実現できる方法を探るためには、地域内外からの協力や支援が不可欠です。
この成果は、産官学民それぞれの立場の強固なつながりによるものです。
「しごと」を創り出すための創意工夫
地域に根ざした「しごと」を創り出すには、地元の資源や人材、ネットワークを生かした創意工夫が必要です。
例えば、地元産業を活用した新たなビジネスの構築や、地域特性を活かしたツーリズムの推進、また新しい技術を伴ったプロジェクトによる地域活性化などが挙げられます。
地域の持続的な「しごと」創りは、地域経済の自立、雇用の増大に直結します。
しかし何より重要なのは、この「しごと」が地域のニーズと一致しているかどうかです。
地域の特性や文化、歴史を尊重しつつ、現代的なニーズに応えることを目指す「しごと」創りが重要です。
新たなまちづくりモデル:遠野みらい創りカレッジの成功事例
本書では、地域に新たな創造力をもたらす成功事例として「遠野みらい創りカレッジ」の取り組みを挙げています。
これは、岩手県遠野市を拠点にしたプロジェクトで、地域の若者が中心となり、企業や大学、行政、住民を巻き込んで地域の価値を再発見し、持続可能な地域社会を構築するものです。
「遠野みらい創りカレッジ」は、多くの地元住民や企業、自治体との協力を得ながら、地域内外の多様な人々を巻き込むことに成功しています。
その結果、生まれたのは、地元に根ざしたビジネスや地域活動、新たに輩出されたリーダー的な人材たちです。
このプロジェクトの成功は、産官学民の協働がもたらす大きな力を証明しています。
樋口氏が示すように、地域社会が一丸となって「まち・ひと・しごと」を創り続ける姿勢は、他の地域でのまちづくりにおいても範となるべきです。
地域の若者にとって魅力ある環境を提供することが、地域繁栄の鍵となるのです。
行政と企業の協力で実現する未来のまちづくり
行政と企業、それぞれが持つ力を最大限に活かしつつ、共に歩むという姿勢はまちづくりの中で非常に重要です。
行政は地域の特性を熟知しており、さまざまな規制や制度に対応する力があります。
一方で企業は、資源やアイデアを持ち、競争力のあるビジネスモデルを構築する力を持っています。
この二つが協力することで、地域経済の活性化、住民の暮らしの向上、持続可能な環境づくりが実現します。
「まち」の創造においては、行政が地域を越えた協力関係を強化し、企業がCSR活動として地域貢献を進めるという姿勢が非常に重要です。
こういった活動が、住民の「ひと」を巻き込む形で進行し、持続可能な「しごと」を生み出していくのです。
これは継続的なまちづくりにおけるビジョンとなり得るものです。
まとめ:未来を築くための戦略的まちづくり
これまでの内容を通じて、継続的な「まちづくり」には、産官学民が一丸となった協力体制が欠かせないことを見てきました。
リーダーシップはもちろん重要ですが、コーディネート力によって異なる立場の人々が協力し合い、一つの大きな目標に向かうことが求められます。
特に地域固有の課題や特性を活かしながら、どのようにして持続可能な社会を実現していけるかという具体的な手法が重要です。
この現代の「まち・ひと・しごと」創りは行政や企業の協力はもちろん、地域の人々の自発的な参加と取り組みに大きく依存しています。
これによって、今後の地方創生に向けた新たなモデルが構築されていくでしょう。
各自がそれぞれの役割を理解し、持ち場での貢献を果たすことで、多くの地域で同様の成功を収めることができるのです。
樋口邦史氏の著書「まち・ひと・しごと創り」では、このプロセスや戦略が具体例とともに詳細に解説されており、未来のまちづくりを考える上で必読の一冊と言えるでしょう。