人事労務革新の必需品『経労委報告』実務書
経団連が公表する「経労委報告」は、企業の経営者や人事・労務担当者にとってバイブルとなる存在です。
特に最近の社会的・経済的な変化の中で、新しい労働スタイルや法改正への対応が求められる中、この実務書はどう活用すれば良いのでしょうか。
本記事では、『経労委報告』を深く理解するためのポイントや内容について詳しく見ていきます。
経営環境を理解する序章の意義
本書の序章「企業を取り巻く経営環境」では、まず日本の経済状況や労働市場の現状、さらには企業収益の動向が様々な統計データに基づいて説明されています。
これにより、企業が現在直面している環境をしっかりと把握した上で、今後の戦略を構築するための基盤が形成されます。
日本経済の動向を見定めることで、労使交渉や人事戦略の立案においてどのような視点を持つべきかが明確になります。
ウィズコロナ時代の人事労務改革
第1章では、特に「ウィズコロナ時代における人事労務改革の重要性」が語られ、ポストコロナを見据えた働き方改革の必要性が強調されます。
ここでは、働き手のエンゲージメントを高めるための施策や、場所と時間にとらわれない働き方の推進、さらにはダイバーシティ&インクルージョンの重要性について解説がなされています。
場所に縛られない柔軟な働き方は、パンデミック以降、多くの企業が直面する課題となり、企業事例を11社にわたって紹介することで、具体的な改革の道筋を提供しています。
本書が描く未来の働き方は、ただの改革ではなく、新たな常識を築くための重要な指針となるでしょう。
法改正に対する実務対応
第2章では「労働法制の改正動向と諸課題への対応」が取り上げられており、高齢者雇用や副業・兼業、さらにはフリーランス人口の増加に対応する法改正についても詳しく述べられています。
この部分では、法に関する深い知識が求められるだけでなく、企業としてどのようにこの改正に対応していくべきかという具体的な指針が示されています。
また、育児休業促進や同一労働同一賃金の問題について触れられており、雇用の多様化が進む中で企業がどのように取り組むべきかのヒントを与えてくれます。
このような詳細な解説により、人事部門は最新の法改正に迅速に適応し、労働環境を整えるための道筋をクリアにすることが可能です。
春季労使交渉における基本スタンス
第3章では、2021年春季労使交渉・協議について、経営側の基本スタンスが示されます。
賃金や社会保険料、福利厚生費の動向が詳細に分析され、特に2020年の交渉・協議の総括がなされることで、2021年に向けた方策が具体化されます。
連合の方針を引用しつつ、企業がどのようにこれらの課題に対応すべきかが解説されており、労使交渉を進めるにあたっての実践的な情報が豊富に詰まっています。
これにより、人事担当者は企業の目指すべき方向性を明確にし、交渉に臨む際の準備を整えることができ、労使双方にとってのウィンウィンな結果を導き出すための価値あるガイドラインとなっています。
参考資料と統計データの活用法
本書の巻末には、統計資料や参考資料が豊富に掲載されています。
経済動向や労働力の事情、さらには企業経営の動きなど、さまざまなデータが集約されており、これらは人事戦略を立案する際に重要な情報源となるでしょう。
特筆すべきは、労働契約法第20条をめぐる裁判例の解説です。
この部分は法律の専門知識を深めるための貴重な資料となり、法律関連の理解を深めることで、企業としての法令遵守を強化する手助けとなります。
まとめ 人事・労務担当者に向けた実践的指南書
『経労委報告』は、ただの政策解説書ではなく、実践的で、直ぐに現場で活かせる指南書としての性格を持っています。
特に、ウィズコロナ時代の新しい労働スタイルの提案や、労働法改正に対する具体的な企業対応を示すことで、読者にとって有益な情報が豊富に詰まっています。
人事労務改革や交渉に悩む担当者たちにとって、必携の一冊と言えるでしょう。